漢字ドリルの丸つけをしていると、毎回ふしぎな場所で止まります。息子は「右手」をすらすら読むのに、「左右」で黙る。同じ右です。さっき読んだばかりの字です。
「これ、さっきのと同じ字だよ」と言うと、息子は心底納得のいかない顔で言いました。
「同じ字なのに、読み方ちがうの?」
それはそうです。ずるいと思います。ひらがなは1文字に1つの音しかないのに、漢字だけ急に読み方が増える。しかもその変わり方は、隣に来る字によって決まります。そんな規則を、書き取り20回の宿題のどこで教わるんだろう、と丸つけしながら考えていました。
書けるようにする練習と、読めるようにする練習は別物でした
学校の漢字の宿題は、ほとんどが書き取りです。マスに20回書いて、はねとはらいを直されて、次の字に進む。字の形を体に入れる練習としては、これ以上のものはないと思っています。紙と鉛筆でやるべきことです。
ただ、息子がテストで落とすのは字の形ではありませんでした。読みです。書けるのに読めない、というより、書く練習しかしていないので読みが後回しになっている。ドリルを何周させても、落ちる場所は変わりませんでした。
順方向だけ確認して、通ったつもりになっていました
テストの仕事をしていると、これは見慣れた形です。登録した値が一覧に出ることだけ確認して、一覧から詳細に戻る経路を誰も踏んでいない。片方向だけ通して「動きました」と言ってしまうやつです。逆から確認すると、あっさり崩れます。
漢字も同じでした。「右手」を見て「みぎて」と言えることと、「みぎて」と聞いて「右手」を選べることは、別の力です。息子は前者だけを練習していて、僕はそれを見て「読めている」と判断していました。判定条件がゆるかったのは、こちらのほうです。
覚えたつもりを見つけるには、問題の向きを変えるしかない。それなら、向きを変えて出す場所を作ればいい。そう思って、ツールを作りました。
小1の80字と小2の160字を、そのまま入れました
作ったのは、漢字アプリの「かんじ修行」です。小1・小2の漢字の読みを4択で練習する、無料のWebアプリです。
学年別漢字配当表にそって、小学1年の80字と2年の160字、あわせて240字を収録しています。学年で範囲を選べるので、今習っているところだけを回せます。ことばに使う漢字も、その学年までに習うものにとどめました。習っていない字が混ざると、そこで手が止まってしまうからです。
1回10問です。夕食前の数分で1セット終わる、くらいの重さにしたかった。
読む修行と、漢字にする修行。向きを変えて2回聞きます
「かんじを よむ しゅぎょう」は、ことばを見て正しい読みを4つから選ぶもの。「かんじに する しゅぎょう」は逆に、ひらがなの読みを見て正しい漢字のことばを選ぶものです。この2つを行き来すると、読めるけれど選べない字が浮かび上がります。
選択肢には、同じ漢字の別の読みをわざと混ぜてあります。「右手(みぎて)」の問題に「さゆう」が並ぶ、という具合です。意地悪に見えますが、うちの息子が実際に転んだ場所がここでした。間違えると正しい読みがその場で出るので、音読みと訓読みをセットで覚え直せます。
10問終わると、その回に間違えたことばだけが一覧で残ります。うちではそこをノートに書き写して、書き取りはそこだけやらせるようにしました。20字ぜんぶ書かせるより、たぶん効いています。
無料・登録不要・インストール不要で使えます
子ども向けのアプリを探すとき、いちばん面倒なのが会員登録とインストールだと思います。そこは全部なくしました。
- 無料 … 課金も、時間制限もありません
- 登録不要 … アカウントもメールアドレスも要りません
- インストール不要 … ブラウザでURLを開くだけです。スマホ・タブレット・パソコンのどれでも動きます
- 成績はサーバーに送っていません … 出題も採点も、その端末の中だけで動いています
- 広告なし … 途中で別の画面に飛ばされることもありません
書き取りは、あとから足しました(ただし採点はしません)
公開したときは、画面に指で書かせる機能を付けていませんでした。字を書く練習は紙と鉛筆に勝てないと思っていたからです。ただ、4択だと思い出さなくても選べてしまう場面があり、2026年9月に「かんじを かく しゅぎょう」を足しました。よみかたを見て漢字を書き、「はんてい」で正解を出して、自分で丸をつけます。筆跡の自動判定はしていません。合っているのに×が出ると、そこで手が止まってしまうからです。この判断については別の記事に書きました。
それでも、画面の上で書いた字には力の入れ方も止めもはねも残りません。そこはドリルの仕事だと割り切っています。
3年生以上の漢字も、まだ入っていません。240字だけです。増やす前に、この範囲でちゃんと使えるかを見たかった。中途半端に広げて全部が薄くなるのは、仕事でも何度か見てきました。
追記(2026-09-21):小3〜小6の漢字も入れて、小学校で習う1026字すべてを練習できるようにしました。学年は「小1コース」〜「小6コース」から選べます。6年生の次には、中学受験に出る特別な読み(今日・七夕・土産など)や四字熟語を集めた「じゅけんとっくん」も足しました。使っている漢字は小学校で習う字だけです。
同じ字なのに読み方がちがう、と怒っていいと思う
あの日の息子の「同じ字なのに、読み方ちがうの?」は、いい怒り方だったと思っています。理不尽だと感じたということは、規則を規則として見ているということです。そこに気付いた子は、次から「この字、他の読み方あるのかな」と自分で疑えます。
漢字を覚えるのは、字を書けるようになることだと思われがちです。でも実際に使う場面は、読むほうが圧倒的に多い。看板も、給食の献立表も、読めないと止まります。
丸つけをしていて、いつも同じ場所で止まるお子さんがいたら、一度向きを変えて聞いてみてください。書けていないのか、読めていないのか。直す場所が変わるかもしれません。