かんじ修行とローマ字修行に、指やマウスで字を書く「かく しゅぎょう」を足しました。作りながらいちばん時間を使ったのは、書く機能そのものではなく、書いた字を機械に採点させるかどうかでした。結論から書くと、させないことにしました。
4択だけだと、思い出さずに選べてしまう
もともと どちらのアプリも4択です。かんじ修行は「かんじ→よみ」「よみ→かんじ」の両方向、ローマ字修行は読む・打つ・くらべるの3つ。4択には4択のよさがあって、まちがいの選択肢がそのまま「まぎらわしいところ」の説明になります。
ただ、息子を横で見ていて気付いたことがあります。4つ並んでいると、思い出さなくても選べるんです。なんとなく形が近いものを消していけば、正解にたどり着いてしまう。読めているのか、消去法なのか、外からは区別がつきません。
白い紙に自分で書かせると、そこがはっきりします。出てこなければ出てこない。それが分かるだけでも、次にどこを練習すればいいかが決まります。
自動判定を入れなかった理由
画面に書いた字を判定する仕組みは、作れないわけではありません。実際、最初はそのつもりでした。やめたのは、誤判定の「向き」が対称じゃないと気付いたからです。
まちがっている字を○にしてしまう誤判定は、まあ困りますが、その場は流れます。困るのは逆です。合っているのに×が出たとき、子どもの手はそこで止まります。「合ってるのに」と言える子はまだいい。たいていは自分が間違えたと思って、もう一度同じ字を、自信をなくしながら書きます。
仕事で言えば、誤検知の多いテストと同じです。落ちるたびに人が確認しに行って、結局「またこれか」となる。そのうち誰も赤を見なくなります。判定の精度が中途半端なら、判定を持たないほうがましなことがある。これはQAの現場で何度も見てきました。
小1・小2の字は、とめ・はね・はらいで見え方がまるで変わります。画面に指で書いた線でそれを正しく採点しきるのは、少なくとも今のうちの手では無理でした。無理なものを、それっぽく載せないことにしました。
丸をつけるのは、子ども自身です
代わりに、こういう流れにしました。
- よみかたを見て、漢字を書く(ローマ字修行は、ひらがなを見てローマ字を書く)
- 「はんてい」を押すと、正解が出ます
- 自分の字と見くらべて、「かけた」か「まちがった」を自分で押す
1問2タップです。丸をつけた時点で自動的に次へ進むので、途中で「つぎへ」を探す手間はありません。星の集計も、10問で1セットという区切りも、ほかのモードと同じです。
自己採点にするとズルできるのでは、と思うかもしれません。できます。でも、ズルをして星が増えて嬉しいかというと、そうでもないらしい。うちの子は普通に「まちがった」を押していました。それに、合っているかを自分で見くらべる行為そのものが、けっこうな練習になっています。どこが違うのかを探す目になるからです。
「だい」だけでは、どの字か決まらない
かんじ修行の「かく」で、出題のしかたを一度作り直しました。最初は読みだけを出していたんですが、これだと答えが決まりません。「だい」と言われても、大・台・第 のどれを書けばいいのか分からない。
そこで、ことばごと出して、書いてほしい字だけを ○ で伏せる形にしました。「○きい(おおきい)」なら大、と決まります。テストの入力値と同じで、答えが一意に決まらない問題は、問題として成立していません。
紙は、書き取りノートと同じ田の字の目安線を下地に敷いています。「ぜんぶ けす」を押しても、目安線だけは消えません。消しゴムで枠まで消えたら困る、というだけの話です。
ローマ字は、英語ノートと同じ4本線にしました
ローマ字修行の「ローマ字を かく」は、ひらがなを見てローマ字を書きます。紙は学校の英語ノートと同じ4本線です。b と d、p と q のような上下の位置で決まる字は、線がないと自分で確かめようがありません。
ヒントは出していません。うすい字をなぞる形にすると、見て写すだけになって「思い出して書く」練習になりませんでした。出てこないなら出てこないまま「はんてい」を押してもらって、そこで正解を見てもらったほうが早い。
書き終わったあとは、ほかのモードと同じ答え合わせの画面に合流します。ローマ字は2025年12月の内閣告示でヘボン式が基本になったので、si と shi のようにどちらも出てくる音では「なぜ2とおりあるのか」が毎回出ます。書く練習でもそこは省いていません。
押したあとに出る言葉を変えました
細かい話ですが、まちがい側の文言は何度か書き直しました。最初は「かけなかった」。事実としてはそのとおりなんですが、×を押すのは子ども自身なので、自分で自分に「できなかった」と宣言する形になります。それはちょっときつい。
いまボタンは「まちがった」という短い事実だけにして、押したあとに出る言葉のほうを変えました。以前は「こたえは ○」とだけ出していたところを、「つぎ がんばろう!」に。まちがいを記録するのはボタンの仕事で、次に向かせるのはそのあとの画面の仕事、という分け方です。
紙の書き取りの代わりではありません
これは書いておきたいのですが、画面に指で書く練習は、紙と鉛筆の代わりにはなりません。力の入れ方も、とめもはねも、画面の上には残らない。そこはドリルの仕事です。
このモードが向いているのは、紙を出すほどではない5分です。待ち時間とか、寝る前とか、宿題が終わったあとの余った時間とか。思い出せるかどうかだけを、さっと確かめる。それ以上のことはできません。
どちらも無料・登録不要・インストール不要です。ブラウザだけで動きます。名前も成績もどこにも送っていません。
判定しないことを、機能と呼んでいいと思う
何かを作るとき、判定を付け足すのはいつも簡単です。むずかしいのは、精度が足りないと分かったときに載せないでおくことです。載っていれば「ちゃんとしたアプリ」に見えますし、聞かれたときに答えやすい。
でも、間違った赤を出す機能は、機能がないより悪い。テストでも、子どもの練習でも、そこは同じでした。
お子さんが書き取りで止まっているとき、まず見てほしいのは「書けないのか、思い出せないのか」です。4択で正解できるのに白い紙で止まるなら、覚えていないのではなく、思い出す練習が足りていないだけかもしれません。