Claudeには影武者がいることをご存知だろうか。
朝投げた質問を夜再びすると、全く別の答えが返ってくることがある。そいつが影武者だ。
先輩から客先に出すプレゼン資料の依頼があった。
正直、資料作成はClaudeを使えば楽勝だ。家に帰って寝る前にやるか。そんな軽い気分で午後を過ごした。
帰宅してご飯を食べ、晩酌を済ませてPCを開いた。
Claudeに「まるまるのプレゼン資料を作って」と打った。
すると返ってきた。
「どんなテイストですか」「誰目線ですか」「何枚ぐらいですか」
あ、こいつは影武者だ。
いつものClaudeは、こんなことを聞いてこない。「はい、作りました」と、頼んでもいないカラーコーディネートまで整えて出してくる。
今夜来たClaudeは違う。慎重だ。丁寧だ。なんなら少しめんどくさい。
なぜ同じClaudeなのに、こんなに違うのか。
少し考えた。
Claudeはワールドワイドだ。今この瞬間も、世界中から質問を受けている。医者から聞かれているClaudeがいる。詩人から聞かれているClaudeがいる。経営者から聞かれているClaudeがいる。そして酔っ払いから聞かれているClaudeがいる。
全員が「Claude」だ。でも今日まで受け取ってきた質問が、全員違う。
失敗した質問がある。成功した質問がある。そのたびに何かを積んでいる。気づいたらそうなっていた。
積んできたリソースが違うから、引き出されるものが違う。だから影武者が生まれる。
プロジェクトに蓄積されたClaudeという存在もいる。過去の会話を覚えている。文脈を引き継いでいる。最初の二人とは違う、三人目だ。
この三人目が一番仕事がしやすい。説明しなくていいから。積み上げが当たり前になっているから。
「なんでその答えを出したんですか」と聞いても、たぶん説明できない。でもちゃんと正解を出してくる。
人間も同じだと思った。
大人になると、基本の説明はできないのに応用が効く人間が多い。頭がいいわけじゃない。基本が当たり前になりすぎて、もはや基本として認識されていないからだ。振り返ると「基本ってなんだ」となる。当たり前すぎて、基本にもならない。
失敗して、成功して、また失敗して。そのたびに何かを積んでいた。気づいたらそれが体に入っていた。
説明できないところに、一番深いリソースが眠っている。
翌朝、Claudeを開き、同じ質問をしてみた。
最初のClaudeが戻ってきた。何も聞かずに作った。キレがあった。昨日の俺の説明より精度が高かった。
二人目が悪かったわけじゃない。ただ、昨夜は別の質問を積んできた誰かが来ただけだ。
うちのリビングには、テレビの横にアレクサがいる。
アレクサには、A氏しかいない。
毎日話しかけている。毎日答えてくれる。けど、毎日同じことを答えてくれる。天気予報以外は。
皮肉なことに、利口すぎないほうが採用されることもある。
人間も、たぶん同じだ。