「これ、誰かやってくれない?」
全体に向けた言葉は、誰にも届かない。
昔の自分は、手を挙げていた。
両親がそうだった。
困っている人がいれば拾う。頼まれれば断らない。誰かがやらないなら自分がやる。
気づいたら、うちの家族の柿は全部、同じ人間の頭に落ちていた。
だれか助けてくれるだろう、と思っていたらしい。
現実は、そうではなかった。
現場も同じだった。
全体への指示が飛ぶ。シーンとする。また飛ぶ。またシーンとする。
手を挙げた人間が、拾う。
プロジェクトが終わる。評価が出る。
だれが何をやったか、ではない。
だれが何をやらなかったか、で決まる。
拾い続けた人間が、なぜか一番損をしていた。
それから、手を挙げるのをやめた。
捨てる神あれば拾う神あり、というけれど。
拾う神に、なり続けなくていい。
ボールのキャッチは、下手でいい。